LIVE REPORTライブレポート

ミナホ初の学生オーディションで幻想痛、コロブチカ、Marie’s Girlが選出!
BIGMAMAをゲストに7組が挑んだFM802『MINAMI WHEEL 2024 -New Age- FINAL』

大阪のラジオ局FM802がミナミの街のライブハウス一帯をジャックし、20会場以上で総勢450組以上のアーティストが出演するショーケース・ライブサーキット『FM802 MINAMI WHEEL』、通称ミナホ。
開催26回目を迎える今回は、学生の才能にフォーカス!ライブハウスでの実演を含む審査を勝ち抜いた学生は、「MINAMI WHEEL 2024 -New age-」としてミナホに出演!
先日8月20日(火)に心斎橋・BIGCATにて最終審査を開催、6月に行われたライブハウスでの実演審査を勝ち抜いた7組が登場!審査は有観客にて開催し、ゲストアクトとして、BIGMAMAが出演しました。
どのアーティストがMINAMI WHEEL 2024への出場権を勝ち取ったのか…そのレポートをお届けします。



オーディションライブ『MINAMI WHEEL 2024 -New Age- FINAL』が、8月20日に大阪・BIGCATで開催された。

『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』は、大阪のラジオ局・FM802が、毎年秋に大阪ミナミエリア一帯のライブハウスで行ってきたライブサーキット『FM802 MINAMI WHEEL』、 通称「ミナホ」への出演権を懸けた関西圏の学生限定オーディションとして今年初めて設けられ、1月1日よりエントリー受付を開始。約100組の応募の中から、音源審査を経て、 6月15日大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE、28日大阪・ROCKTOWNでの実演審査を通過した、ファイナリスト7組がBIGCATに登場。

FM802DJやスタッフ、来場者らによる投票で選ばれた3組が、『Eggs presents FM802 35th Anniversary “Be FUNKY!!” MINAMI WHEEL 2024』に出演できる。
オープニングトークでは、FM802DJハタノユウスケが企画の主旨や観客投票の流れを説明。続いてゲストアクトとしてBIGMAMAを紹介すると、金井政人(Vo.Gt)が突如ステージに現れるサプライズも!
「この中に新しいスターがいるかもしれない。皆さんと同じ気持ちで楽しもうと思ってここに来ました。 『MINAMI WHEEL』で人生が変わったバンド、アーティストをたくさん見てきましたから、ぜひ勝ち取ってください!」と金井が頼もしいエールを送り、いよいよ『MINAMI WHEEL 2024 -New Age- FINAL』がスタートした。
台所きっちん


関西最大のサーキットイベントを目指すオーディションのトッパー。そんなプレッシャーを大いに背負ったはずの「運命」の一音目から、バンドのケミストリーをきっちり感じさせた大阪発のガールズスリーピース、台所きっちん。各パートのフックのあるフレージング、結成からわずか1年というフレッシュさながら、花菜(Gt.Vo)の物おじしないたたずまいに今後が楽しみになる。

MCも最低限に、ファニーなバンド名とは裏腹の激しさを備えた「ボブ」や「もしも来世で逢えたなら」と、疾走感漂うラブソングで一気に畳み掛けた、台所きっちんのエモーショナルなパフォーマンス。何より大舞台を楽しんだ3人が、『MINAMI WHEEL 2024 -New Age- FINAL』の幕開けから鮮烈な印象を残した。
幻想痛


「Poet」、そして「今日も今日とて。」と、ずきこ(Dr)の強烈なドラミングを軸に、メロディと並走する秀逸なギターワーク、それと有機的に絡み合うベースとコーラスと、ロックバンドのアンサンブルの理想型を形にしてみせたのが、兵庫県西宮発の幻想痛だ。

「物事を簡単に諦めやすくなってしまったなと思うんです。大人になったらいろんな理由が落ちているから。でも、僕はそういう理由でバンドをやめたくないし、まだこのバンドでやりたいこと、やらなきゃいけないことがたくさんある。初めて行ったライブハウスは梅田クラブクアトロ、初めて行ったフェスは『RADIO CRAZY』。ずっと関西の音楽シーンに魅せられて、今度は勝手に僕らの番だって思っています」

ソングライティングを担う仙波ルイ(Gt.Vo)のこの言葉で、BIGCATの空気が変わった。総立ちのフロアに投げ掛けた「大人主義」からは、同世代のリスナーを貫くポテンシャルがひしひし伝わる。彼らの名がシーンに浮上する日も近いと予感させた濃密な15分間だった。
Marie’s Girl


初っぱなのエッジィな一撃から一転、スローバラードな始まりの「サテライト」でいきなり心をつかんだMarie’s Girlは、ベースボーカルのスリーピースバンドという形態を裏切らないパンキッシュなサウンドを轟かせ、ハヤシケンタロウ(Vo.Ba)が「デカいライブハウス、いつも通りじゃなくていつも以上のライブをして帰ります!」と宣言した「優しさに触れる前に」でも全力疾走!

「『MINAMI WHEEL』は一晩でロックバンドの運命を変えるらしいです。でも悲しいことに、ロックバンドは今日来てくれたあなたの運命まで変えることはできない。俺たちはうまく演奏もできないし歌えもしないですけど、もしあなたがつらいな、苦しいなと思ったとき、あなたに寄り添うこんな歌が降り注ぎますように」(ハヤシ、以下同)

後半戦は「拝啓」を着火点に、「これがMarie’s Girl!」と叫んだ「サクラ」、「俺らがつかみたいのは『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』=新しい時代!」となだれ込んだ「2003」と、その衝動を途切れることなく爆発させたMarie’s Girl、完全燃焼!
Manpa


唯一のソロアクトであるManpaは、2002年生まれのヒップホップアーティスト。いざ本番となっても「お願いしゃーす」と、まるで自分の部屋にでもいるかのようにリラックスした表情で、ラップトップとターンテーブルだけのシンプルなセットから、メロウな「Sick八苦」を投下する。

「バンドじゃないんで、いい意味で味変しちゃってください。そんなこんなで2曲目いっちゃお!」と続けた「言う通り」ではトリッピーでドープな歌声で引き込み、フリースタイルで宣戦布告も。ラストは「GuruGuru」の不穏なトラックに長尺のリリックを乗せ、「世のお父さんお母さん、こんな息子は作らないようにお願いします」と言い残す。

ライブはこの日で3回目(!)とは思えない抜群のセンス。普段は服飾専門学校に通い、音楽活動を始めるきっかけはFM802という現役ヘビーリスナーにして、予測不可能な新鋭から目が離せない。
Dignity Destination


まさに『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』。現役高校生であり最年少のDignity Destinationがフィードバックノイズを切り裂いたオープニングナンバーは、「ツバメ」。これでまだ18歳とは驚きのながさわ(Vo.Gt)の大人びたボーカルをはじめ、続く「Squall」における演奏力、ズシリと重いバンドサウンドの説得力……何もかも高校生とは信じられないぐらい仕上がっている。

「初めまして、大阪・寝屋川から来たDignity Destinationです。オーディションと言えど、楽しむことを忘れたらあかんなと。ここから最高にぶっ飛ばしていきます!」とながさわの雄たけび一発、ハードなリフで攻め立てる「アメリカンイーグルス」~ゴリゴリにロッキンな「ジャーニー」と、有言実行の爆音を届けたDignity Destination。2024年の年明け早々に始動し、『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』の最終選考まで勝ち抜いた10代、末恐るべし!
Telepathy


ダークなオルタナサウンドとかれんな歌声が溶け合う「ゆれる」では、ブレイクのエクスプロージョンな轟音でも圧倒した、あのさつき(Gt.Vo)とおかもとなな(Ba.Cho)によるツーピースバンド、Telepathy。前曲同様、短め歌詞のループで聴かせる性急な「めぐる」、打って変わってプログレ的展開の大作「せまい」ではうごめくベースラインも耳に残り、溢れる思いをトーキングブルースのごとくぶちまける!

決勝審査(ファイナルまたは最終審査)を見据えてライブを重ね、新曲を書き下ろすなど精力的に活動してきた2人は、高校時代からコンテストでの優勝経験もあるだけに、まだまだ伸びそう。ライブ中は寡黙だったが、演奏後のインタビューでは『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』への情熱を語ってくれたTelepathyだった。
コロブチカ


最後を務めるのは、くるり、おとぼけビ~バ~らを輩出した京都・立命館大学の名門音楽サークル、ロックコミューンで2022年に結成されたコロブチカだ。サウンドチェックの段階から期待感が一気に高まり、1曲目の「ユーズド・ユース」が始まれば、それは確信へと変わる。ルックス、編成、歌唱法、ワードチョイス、ギター……90年代後半~ゼロ年代の京都のロックバンド黄金時代の雰囲気があらゆる面からにじみ出ており、ゆったりとしたBPMでパワーポップをかき鳴らす!

「今日、誰を見に来たとか、投票しに来たとかは関係なくて、ここにいる皆さんをブチ上がらせに来ました。めっちゃ音楽が大好きです。音楽が大好きな皆さんと一緒に最高になりたい!」と北原圭悟(Vo.Gt)が絶叫し、「ボーイフッド」~「Teenage Riot」と駆け抜けた、ニューウェイブ京都代表ことコロブチカ。彼らが放った3曲には、遅かれ早かれいずれ必ず『MINAMI WHEEL』に出るはずだと思わせる地力が、しっかりと刻まれていた。
BIGMAMA(ゲストアクト)


オーディエンスによる投票~集計のインターバルには、ゲストのBIGMAMAによるスペシャルライブも! 『MINAMI WHEEL 2024 -New Age-』に向け金井は、自身のnoteで宝物のようなコメントを今日の出演者に送ってくれたが、ライブでもその真摯なスタンスは同じ。東出真緒(Vl.Key.Cho)のバイオリンがいざなった「Strawberry Feels」から、5人がぶつかり合い高め合っていく壮絶なエモーションをBIGCATに放り込み、その熱量のまま「ヒーローインタビュー」へ。メンバーが横一線となってハイエナジーな音楽を奏でる光景は何度見ても圧巻で、キャリアを重ねた今、さらに輝きを増しているかのよう。

「No.9」ではBIGCATの高い天井を突き破るような高揚感で包囲し、歩んできた時間が作り上げたグルーヴにまみれる「秘密」の幸福感は、代えの効かない感動を心と体に染み渡らせていく。「終わらない青春の歌を!」(金井、以下同)と突入した「17(until the day I die)」は、若き才能にとってどれだけ心強く響いたことだろう。すさまじい迫力の「現文|虎視眈々と」で「誰のまねもしなくていいよ、もっと自由に!」と最短距離で導いてくれる金井の呼び掛けに、「MUTOPIA」に包まれる心地良さと頼もしさに、またも力をもらう。

「美術|ESORA」でも、完全に無双状態のBIGMAMAが狂乱のダンスフロアを創生。「今日ステージを共にした一人一人のアーティストへ送ります」と鼓舞した「神様も言う通りに」まで、徹底的に音楽で背中を見せたノンストップクルージングな全9曲、もう完璧!
投票の末、栄えある3組に選ばれたのは、幻想痛、コロブチカ、Marie’s Girl!
結果発表後には、「僕は自信がないタイプなので、これを機に自信を持って頑張ります」(幻想痛・仙波)、「今日以上にぶちかまします!」(コロブチカ・北原)、「出られなかったバンドの意思も引き継いでステージに立ちたい」(Marie’s Girl・ハヤシ)と、それぞれが意気込んだ。幻想痛、コロブチカ、Marie’s Girl は10月12日(土)~14日(月・祝)、大阪・ミナミエリア一帯の20会場を舞台に450組以上のアーティストが参加する『Eggs presents FM802 35th Anniversary “Be FUNKY!!” MINAMI WHEEL 2024』に出演する。
撮影:キョートタナカ
文:奥“ボウイ”昌史